WordPressとノーコードツールはどちらが合う?介護事業所のホームページ制作を比較
介護事業所のホームページ制作で迷いやすいWordPressとSTUDIO・Wixなどのノーコードツールを、更新、保守、費用、自由度、移行の視点から比較します。

介護事業所のホームページを作る方法を調べると、WordPress、STUDIO、Wixなど、さまざまな名前が出てきます。
「WordPressは自由度が高い」「ノーコードなら簡単」と説明されることがありますが、実際の選びやすさは機能の多さだけでは決まりません。誰が更新するのか、トラブル時に誰が対応するのか、数年後に作り直す可能性があるのかによって、合う選択肢は変わります。
大切なのは、現在の担当者が使えるかだけでなく、担当者が交代しても、安全に更新と管理を続けられるかです。
今回は、WordPressとSTUDIO・Wixなどのノーコード型ホームページ作成サービスを、介護事業所の運用に関係する視点から比較します。
介護事業所ホームページ改善シリーズ
第14回では、重要事項説明書や運営規程をWebで公開・更新する実務手順を解説しました。第15回では、その更新を支えるホームページの仕組みに注目し、WordPressとノーコードツールの違いを整理します。
そもそもホームページはどうやって作られているのか
WordPressやノーコードツールを比較する前に、ホームページの基本的な仕組みから確認します。
私たちがブラウザで見ているホームページは、主に次のような言語で作られています。
- HTML:見出し、文章、画像、リンクなど、ページの内容と構造を指定する
- CSS:文字の大きさや色、余白、並び方など、見た目を整える
- JavaScript:メニューの開閉、画像の切り替え、入力内容の確認など、ページに動きを付ける
これらの言語で書かれた命令や記述を、一般にコードと呼びます。本来は、コードを記述したファイルを用意し、インターネット上の保管場所であるサーバーへ置くことで、ホームページを公開できます。
ただし、すべてのページを一行ずつコードで作るには、専門知識と時間が必要です。そこで、コードを直接書かなくてもホームページを作成・更新しやすくする仕組みが使われています。その代表が、WordPressとノーコードツールです。
ノーコードツールとは
ノーコードツールとは、HTMLやCSSなどのコードを自分で直接書かなくても、文字を入力したり、画像を配置したり、マウスで大きさや位置を調整したりしてホームページを作れる道具です。
STUDIOやWixなどが、その例です。編集画面で行った操作をもとに、ホームページを表示するために必要なコードをツール側が見えないところで用意してくれます。
「ノーコード」は、完成したホームページにコードが存在しないという意味ではありません。作る人がコードを直接記述しなくてもよいという意味です。
ノーコードでも、すぐ思いどおりに作れるとは限らない
コードを書かなくても、見やすいホームページを作るにはWeb制作の基本的な考え方が必要です。
たとえば、編集画面には次のような言葉が出てきます。
- パディング:枠の内側に設ける余白
- マージン:コンテンツや枠の外側に設ける余白
- カラム:文章や画像を縦方向に分けた列
- レスポンシブ対応:パソコンとスマートフォンなど、画面幅に合わせて表示を調整すること
- 代替テキスト:画像が見えない状況でも内容が伝わるように付ける説明文
余白が狭すぎれば読みづらくなり、パソコンだけを見て作るとスマートフォンで文字や画像が崩れることがあります。ノーコードツールは制作作業を助けてくれますが、ページの構成、読みやすさ、情報の正しさまで自動で判断してくれるわけではありません。
WordPressとは
WordPressは、ホームページの文章、画像、ページなどを管理し、更新しやすくするためのソフトウェアです。このような仕組みは**CMS(コンテンツ管理システム)**と呼ばれます。
一般的なWordPressのホームページでは、次のものを組み合わせます。
- サーバー:ホームページのデータを置き、インターネットへ公開する場所
- ドメイン:
example.comのようなホームページの住所 - テーマ:ページ全体のデザインや基本的なレイアウトを決めるもの
- プラグイン:問い合わせフォームなど、必要な機能を追加するもの
WordPressも、日常的な文章や画像の更新ではコードを書かずに操作できます。ただし、最初の設置、デザインの細かな調整、機能追加、不具合対応では専門知識が必要になることがあります。
また、WordPress本体、テーマ、プラグインの更新、バックアップ、セキュリティ対策など、公開後の技術的な管理も必要です。事業所で対応しない場合は、制作会社や保守会社へ依頼します。
この記事では、主にWordPress.orgで公開されているソフトウェアを、契約したサーバーへ設置して使う方式を「WordPress」と表記します。WordPress.comという、サーバー管理を含む別のサービスもあるため、契約時にはどちらを使うのか確認してください。
WordPressとノーコードツールの違いを簡単に表すと
たとえるなら、WordPressは土地を借り、建物や設備を選んで管理する方法に近く、ノーコードツールは、建物と設備が用意された場所をサービスとして契約する方法に近いといえます。
WordPressは組み合わせを選びやすい一方、管理する範囲が広くなります。ノーコードツールは管理の一部をサービス側に任せやすい一方、利用できる機能や移行方法はサービスの仕様に沿います。
先に結論:ツールより「運営体制」で選ぶ
WordPressとノーコードツールのどちらかが、すべての介護事業所にとって正解ということはありません。
- 専門的な保守を任せられる相手がいて、将来の拡張性を重視するならWordPressが候補になる
- ページ構成をある程度絞り、サーバー管理の負担を減らしたいならノーコードツールが候補になる
- 自社更新をしないなら、ツールの操作性より制作会社の更新体制や契約内容が重要になる
どの仕組みでも、内容を考え、写真や文章を準備し、公開前に確認する作業は必要です。「簡単に作れる」と「簡単に運営し続けられる」は、同じではありません。
介護事業所の視点で7項目を比較
| 比較項目 | WordPress | STUDIO・Wixなどのノーコードツール |
|---|---|---|
| 初期制作 | 構成やデザインの自由度が高い。専門知識が必要になる場合がある | 用意された編集環境で作成。サービスの機能範囲内で進めやすい |
| 日常の更新 | 更新画面を整えれば自社運用も可能。設定によって操作が異なる | 編集画面が統一されている。サービスごとに操作方法が異なる |
| 技術的な保守 | 本体・テーマ・プラグイン・サーバーの管理が必要 | 公開基盤の保守は主にサービス側。サイト内容と契約の管理は必要 |
| 拡張性 | テーマ、プラグイン、独自開発で広げやすい | 各サービスが提供する機能・連携の範囲で拡張する |
| 費用 | サーバー、ドメイン、制作、保守などを分けて確認 | 利用プラン、ドメイン、制作・更新代行などを分けて確認 |
| 移行 | ファイルやデータベースを扱えるが、環境によって移行作業が必要 | 他サービスへの移行方法や書き出せるデータはサービスごとに異なる |
| 問い合わせ先 | サーバー会社、制作者、プラグイン提供者などに分かれる場合がある | サービスのサポートと制作者。範囲外の問題は切り分けが必要 |
表だけを見るとWordPressは高機能、ノーコードは簡易的に見えるかもしれません。しかし、小規模な事業所サイトに必要なページが無理なく作れ、更新を続けられるなら、機能が多いこと自体は優位性になりません。
反対に、将来複数拠点へ広げる、職種別の採用情報を充実させる、外部システムと連携するなどの計画がある場合は、現在必要な機能だけで決めると作り直しが早まることがあります。
WordPressが候補になりやすい事業所
次のような場合は、WordPressの柔軟性を活かしやすくなります。
- 複数の事業所やサービスを一つのサイトで管理したい
- お知らせ、採用情報、コラムなどを継続的に更新したい
- 将来追加したい機能や外部連携が具体的にある
- デザインやページ構成を細かく調整したい
- 技術的な保守を担当できる職員または制作会社がいる
- サーバーやデータの管理方法を自分たちで選びたい
WordPressで特に確認したいこと
WordPress公式の資料でも、本体を最新の状態に保つことやバックアップの重要性が案内されています。制作時には、見た目だけでなく次の運用を確認します。
- WordPress本体、テーマ、プラグインを誰が更新するか
- 更新前のバックアップと、問題発生時の復元を誰が行うか
- 管理者アカウントとパスワードを誰が管理するか
- 使用していないプラグインを放置しない仕組みがあるか
- 問い合わせフォームの迷惑メール・不正送信対策があるか
- 障害や改ざんが起きたときの連絡先と対応範囲は何か
「WordPressで作る」という一言だけでは、ここまでの役割は分かりません。保守契約に含まれる作業と、事業所が担当する作業を分けてください。
ノーコードツールが候補になりやすい事業所
次のような場合は、STUDIO・Wixなどのノーコードツールを検討しやすくなります。
- 事業所数が少なく、必要なページ構成が比較的明確
- サーバーへソフトウェアを設置・更新する管理を減らしたい
- お知らせや採用情報を事業所側で更新したい
- サービスに用意された機能で目的を満たせる
- 制作後も同じサービスを継続利用する前提がある
- 月額・年額のサービス利用料として費用を把握したい
ノーコードツールで特に確認したいこと
ノーコードツールは、サービスごとに機能と契約条件が異なります。「ノーコードだから同じ」と考えず、候補ごとに確認します。
- 独自ドメインを使えるプランか
- 作成できるページ数やCMSの記事数に上限があるか
- 複数人で編集するときの権限を分けられるか
- 問い合わせフォームの通知先とデータ保管方法はどうなるか
- アクセス解析や外部サービスを必要な範囲で連携できるか
- 契約を終了したとき、文章・画像・記事データをどの形で受け取れるか
- サイトを別のアカウントや制作会社へ引き継げるか
- プラン変更やサービス仕様変更があったときの影響は何か
サービス側がシステムを管理していても、掲載情報の更新、アカウント管理、契約更新、ドメイン更新は残ります。「保守不要」ではなく、技術的な保守の範囲が変わると考えるのが適切です。
「自分たちで更新できるか」は実際の画面で確かめる
制作会社から「簡単に更新できます」と説明されても、担当者にとって簡単かどうかは実際に触らなければ分かりません。
契約前または公開前に、更新を担当する職員が次の操作を試すと判断しやすくなります。
- お知らせを1件作成する
- 写真を追加し、代替テキストを入力する
- 公開前のプレビューを確認する
- 公開日時を設定または下書き保存する
- 公開済みの記事を修正する
- 誤って変更したときに元へ戻す
操作マニュアルを受け取るだけでなく、担当者自身が一度更新し、分からないときの連絡先を確認します。担当者が交代したときのために、研修や引き継ぎが保守契約に含まれるかも確認してください。
費用は制作価格ではなく「3年間の総額」で見る
初期費用だけを比べると、公開後に必要な費用が見えません。少なくとも3年間を想定し、次の項目を合計します。
WordPressで確認する費用
- 初期制作・設計費
- ドメイン・サーバー利用料
- 有料テーマ・プラグイン・外部サービスの利用料
- バックアップ、更新、セキュリティなどの保守費
- ページ追加や機能改修の費用
- 障害対応や復旧の費用
ノーコードツールで確認する費用
- 初期制作・設計費
- サービスの月額・年額利用料
- 独自ドメイン費用
- 必要な機能を使うための上位プラン費用
- 更新代行、ページ追加、デザイン修正の費用
- 別サービスへ移るときの再制作・移行費用
料金プランや機能は変更されることがあります。記事や比較サイトに書かれた金額だけで決めず、契約時点の公式情報と見積書を確認してください。
安価なツールを選んでも、毎回制作会社へ更新を依頼するなら運用費は増えます。反対に、WordPressの保守費がかかっても、必要な更新や復旧対応まで含まれていれば、事業所の負担を抑えられる場合があります。
問い合わせフォームと個人情報の扱い
介護事業所の問い合わせには、健康状態、生活状況、家族構成など、慎重に扱うべき内容が入力される可能性があります。
WordPressでもノーコードツールでも、次を確認してください。
- フォームで本当に必要な項目だけを求めているか
- 送信内容がどこに保存され、誰が閲覧できるか
- メール通知に入力内容をすべて載せる必要があるか
- 保存期間と削除方法を決めているか
- 退職者や制作会社のアカウントが残っていないか
- プライバシーポリシーに利用目的を記載しているか
- 緊急の相談をフォームだけで受け付けない案内になっているか
「フォームを設置できるか」だけでなく、送信後の情報を誰がどう扱うかまで含めて選びます。必要に応じて、個人情報保護の担当者や専門家へ相談してください。
将来の移行に備えて確認すること
ホームページの仕組みは、数年後に変更する可能性があります。契約前に出口を確認しておくと、変更時の選択肢を残せます。
WordPressの場合
- ドメインとサーバーの契約名義
- WordPressの管理者権限
- ファイルとデータベースのバックアップ
- 使用しているテーマ・プラグインのライセンス
- 別の制作会社が保守を引き継げるか
ノーコードツールの場合
- サービスの契約名義と管理者アカウント
- サイトを別アカウントへ移管できるか
- 文章、画像、記事、フォームデータを書き出せるか
- 独自ドメインを別のサイトへ付け替えられるか
- 解約後にサイトとデータがどう扱われるか
ノーコードツールの画面やデザインを、そのまま別のサービスへ移せるとは限りません。WordPressも、独自機能や特定のテーマに強く依存していると移行に作業が必要です。
移行しやすさはツール名だけで決まらないため、契約名義、管理者権限、受け取れるデータ、再利用できる範囲を確認します。
ホームページの仕組みは「作れる人」ではなく「運営する人」を基準に選ぶことが大切です。多機能でも更新できなければ情報は古くなり、簡単な仕組みでも目的に必要な情報が足りなければ役割を果たせません。担当者、更新頻度、保守の依頼先、将来の変更まで先に整理してから比較しましょう。
事業所に合う選択肢を整理するチェックリスト
更新体制
[ ]誰が日常の更新を行うか決まっている[ ]月に何回、何を更新するか想定できている[ ]担当者が交代したときの引き継ぎ方法がある[ ]操作で困ったときの問い合わせ先がある
技術と保守
[ ]システム更新、バックアップ、復旧の担当が明確[ ]問い合わせフォームの情報管理方法を確認した[ ]必要な機能が現在のプランに含まれている[ ]障害時の対応範囲と費用を確認した
契約と将来
[ ]ドメインとサービスの契約名義を確認した[ ]事業所側も管理者権限を持てる[ ]3年間の費用を比較した[ ]解約時に受け取れるデータを確認した[ ]別の制作会社やサービスへ移る方法を確認した
制作会社へ聞きたい7つの質問
- 「このツールを選んだ理由を、私たちの運用体制に合わせて説明してください」
- 「公開後、事業所側で更新できるページと、依頼が必要なページはどこですか?」
- 「システム更新、バックアップ、障害対応は誰が行いますか?」
- 「現在の見積もり以外に、毎年・毎月必要な費用はありますか?」
- 「管理者アカウントとドメインの名義は事業所側になりますか?」
- 「契約終了時に受け取れるデータと、引き継げないものを教えてください」
- 「担当者が交代した場合、操作説明や権限変更を依頼できますか?」
ツールの機能一覧だけでなく、この7つに具体的な回答があるかを比較すると、公開後の姿を想像しやすくなります。
まとめ
WordPressは、サーバーやシステムを含めて管理する必要がある一方、構成や機能を柔軟に設計しやすい仕組みです。STUDIO・Wixなどのノーコードツールは、制作と公開の基盤がサービスにまとめられている一方、機能や移行方法は各サービスの仕様と契約に沿います。
選ぶときは、「どちらが高機能か」ではなく、誰が更新し、誰が保守し、3年間でいくらかかり、担当者交代や契約終了時にどう引き継ぐかを確認してください。
最初の一歩として、現在の運用体制を紙に書き出してみましょう。「更新する人」「技術的な問題に対応する人」「内容を承認する人」の3つが決まると、自分たちに必要な仕組みが見えやすくなります。
参考情報
- WordPress.org「Features」
- WordPress.org Documentation「Updating WordPress」
- WordPress.org Documentation「Backups」
- STUDIO公式サイト
- STUDIO Help
- Wix公式サイト
- Wixヘルプセンター
制作方法、公開後の保守、ドメインとサーバーの名義については、以下の記事もあわせて確認してください。
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