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No.0021介護事業の人材戦略シリーズ2NEW2026-07-26

欠員が出てから求人を始めないための要員計画|介護事業所の必要人材を整理

退職や休職が決まってから慌てて求人を出しても、介護人材はすぐに採用できるとは限りません。制度上の人員基準、現場を回す人数、半年以内の変化、必要な資格や育成可能な範囲を分け、現実的な要員計画を作る方法を整理します。

欠員が出てから求人を始めないための要員計画|介護事業所の必要人材を整理
介護事業の人材戦略シリーズ | 第 2

「来月末で退職したい」と職員から申し出があり、急いで求人を出す。しかし、応募が来ない。ようやく応募があっても、必要な資格や勤務時間が合わない。その間、管理者や残っている職員が勤務を埋め、休みを取りにくくなる。

介護事業所では、このような採用が繰り返されることがあります。

もちろん、すべての退職や休職を事前に予測することはできません。採用を早く始めても、必要な人が必ず見つかるわけでもありません。それでも、定年、勤務時間の変更、資格取得、事業拡大など、すでに見えている変化を整理しておくだけで、欠員が出た瞬間から考え始める状況は減らせます。

今回は、介護事業所の「要員計画」を、難しい人事制度ではなく、半年先の現場を考えるための実務として整理します。

シリーズ第2回

介護事業の人材戦略シリーズ

第1回では、採用・育成・配置・定着を一続きで見る全体像を整理しました。今回は、その出発点となる「いつ、どの職種が、どのくらい必要になるか」を見える形にします。


要員計画は「理想の人数」を並べるものではない

要員計画とは、事業計画や利用者数、提供するサービス、現在の職員構成をもとに、今後必要になる職種・人数・勤務時間・役割を考えることです。

しかし、人材が十分に集まらない介護現場で、理想的な組織図だけを作っても実務にはつながりません。

要員計画の目的は、未来を正確に当てることではなく、次のような問いへ早めに気付くことです。

  • 半年以内に、勤務時間が減る可能性のある職員はいないか
  • 一人が休むと、人員基準やシフトに影響する職種はどこか
  • 特定の資格や経験を持つ職員に、仕事が集中していないか
  • 採用するなら、いつまでに募集を始める必要があるか
  • 経験者でなければならない業務と、入職後に教えられる業務を分けているか
  • 採用できなかった場合、どの業務や事業計画を見直す必要があるか

「〇人採用する」という結論より前に、何が不足し、いつ困り、どこまでなら現在の体制で補えるかを共有することが大切です。


全国的にも「必要になってから採る」が難しくなっている

介護人材の不足は、個々の事業所だけの問題ではありません。

厚生労働省は、第9期介護保険事業計画に基づく推計として、介護職員の必要数が2022年度の約215万人から、2026年度には約240万人、2040年度には約272万人になると示しています。

また、介護労働安定センターの令和6年度介護労働実態調査では、仕事と育児・介護の両立支援に関する事業所の課題として、「代替要員の確保や配置が難しい」が54.2%、「労働時間管理や人材配置が難しい」が36.9%、「制度利用者以外の他の職員の業務負担が大きくなる」が34.3%でした。

これは、職員が休職や短時間勤務制度を利用することが問題なのではありません。一人の勤務が変わったときに、代わりの人をすぐ確保できない構造が、多くの事業所に共通していることを表しています。

だからこそ、求人を出す直前ではなく、変化が確定する前から、複数の可能性を見ておく必要があります。


最初に「3つの必要人数」を分ける

必要人数を考えるときは、最初から一つの数字にまとめず、次の三つに分けます。

見る人数 意味 確認すること
現在の人数 今、在籍している人数と勤務量 実人数だけでなく、常勤・非常勤、勤務時間、夜勤・訪問の可否など
制度上の必要人数 人員基準や加算要件などを満たすために必要な人数 サービス種別ごとの最新基準、常勤・専従・資格などの要件
現場を回すための人数 休暇、研修、急な欠勤、送迎、記録、相談対応なども含めて必要な人数 曜日・時間帯ごとの忙しさ、業務の重なり、代替できない役割

人員基準を満たしていることと、職員が無理なく休みを取りながら現場を回せることは、同じではありません。

反対に、実人数だけを見ても、勤務時間が異なれば実際に確保できる勤務量は分かりません。そこで介護サービスの人員配置では、「常勤換算」という考え方が使われます。簡単にいえば、非常勤職員を含む勤務時間の合計を、その事業所の常勤職員が勤務すべき時間数で換算して捉える方法です。

例えば、その事業所の常勤職員が週40時間勤務の場合、週40時間の職員1人と、週20時間の職員2人の勤務時間を合計すると、単純な計算上は常勤換算2.0人になります。

ただし、必要な職種、常勤・専従の扱い、利用者数の考え方などはサービス種別や要件によって異なります。この記事や付属シートだけで適否を判断せず、最新の指定基準、加算要件、自治体の取扱いを必ず確認してください。


半年以内に起こりそうな変化を書き出す

次に、現在の職員について、半年以内に分かっている変化と可能性を書き出します。

確定している変化

  • 退職日が決まっている
  • 産前産後休業・育児休業・介護休業へ入る予定がある
  • 復職時期が決まっている
  • 法人内の異動や新規事業所への配置が決まっている
  • 資格取得や研修修了の見込みがある

確認しておきたい変化

  • 勤務時間を減らしたいという相談がある
  • 夜勤、送迎、訪問など、一部業務の負担が大きくなっている
  • 家庭の事情や健康状態により、勤務の継続に不安がある
  • 管理者やリーダーが現場業務を埋め続けている
  • 有給休暇や研修の予定を入れると、シフトが成立しにくい

ここで注意したいのは、年齢だけを見て退職時期を決めつけないことです。

既存職員が高齢化している場合、将来の変化を考える必要はあります。しかし、「〇歳だから、半年後には働けないだろう」と一方的に扱えば、本人の意向も、まだ活かせる経験も見落とします。

勤務時間、身体的な負担、続けたい業務、難しくなってきた業務を本人と話し、働き方を調整すれば続けられるのか、経験を別の役割で活かせるのかを確認します。


人数だけでなく「時間帯」と「代替できない仕事」を見る

職員数が足りているように見えても、現場では次のような偏りが起きます。

  • 朝夕の送迎時間だけ人が足りない
  • 夜勤ができる職員が限られている
  • 訪問できる地域や曜日が一部の職員へ偏っている
  • 計画書、請求、家族対応を一人しかできない
  • 新人を教えられる職員が勤務している時間帯が少ない
  • 管理者が欠勤対応へ入り、本来の管理業務が後回しになる

この状態で「介護職員を一人採用する」とだけ決めても、問題の時間帯や業務を補えるとは限りません。

例えば、平日日中に働ける人が採用できても、実際の不足が早朝・夕方・夜勤に集中していれば、職員数は増えても既存職員の負担があまり変わらないことがあります。

必要人材を整理するときは、人数に加えて次の四点を確認します。

  1. いつ必要か:曜日、時間帯、繁忙時期
  2. 何を担うか:直接的なケア、送迎、記録、相談、請求、教育など
  3. 何が必須か:資格、経験、運転、夜勤・訪問の可否
  4. 誰が代替できるか:休んだ場合に引き継げる人と、引き継げない仕事

ここで整理しているのは、現場側の「いつ、どの業務を担う人が必要か」です。次の章では、その業務を担う人を採用するときの「入職時に必要な条件」を整理します。

厚生労働省の介護分野における生産性向上の考え方でも、現在「誰が、いつ、どのような業務を、どの程度の時間をかけて行っているか」を見える化し、業務の明確化と役割分担を見直すことが示されています。

これは単に少ない人数で多く働くという意味ではありません。専門職が専門性を発揮できるようにし、特定の人へ集中している負担や、続けなくてもよい業務を見つけるための整理です。


「必須」「育成できる」「相談できる」に分ける

必要な人物像を考えると、つい次のような条件が並びます。

経験者で、資格があり、夜勤も送迎もできて、パソコンも使えて、土日も働ける人

本当にすべてが入職初日から必要なら、条件として明確にする必要があります。しかし、希望条件まで必須にすると、応募できる人はさらに少なくなります。

条件を、次の三つに分けてみます。

分類 考え方
入職時に必須 法令、安全、単独業務などの理由で最初から必要 特定の資格、運転免許、勤務可能な必須時間帯
入職後に育成できる 教える人・時間・手順を確保すれば習得できる 介護ソフト、記録方法、事業所独自の手順
個別に相談できる シフトや業務分担の調整で対応できる可能性がある 曜日、勤務時間、一部業務の担当範囲

ここで「育成できる」と書くには、教える職員と時間が必要です。「未経験者歓迎」と求人票に書いていても、実際には一人で覚えてもらうしかない状態なら、採用条件と受け入れ体制が食い違っています。

育成できる範囲が狭い場合も、無理に広く見せる必要はありません。現時点で安全に受け入れられる範囲を知り、今後どの業務から教え方を整えるかを決めます。

半年先を数字に置き換えると

例えば、現在4.0人分の勤務量がある職種で、一人の短時間勤務への変更により、半年後は3.5人分になる見込みだとします。一方、休暇や研修を含めて現場を回すには4.5人分が必要なら、不足見込みは1.0人分です。

ただし、ここで「一人採用すればよい」とは限りません。どの曜日・時間帯が不足するのか、入職時に必要な資格は何か、短時間勤務の人を複数採用する選択肢があるかまで分けて考えます。

この例の4.5人分は制度上の人員基準を示す数字ではなく、事業所内で現場を回すために設定した仮の人数です。実際の計画では、制度上の必要人数を別に確認します。


採用できなかった場合の選択肢も計画に入れる

要員計画を作っても、予定どおり採用できるとは限りません。そのため、計画には最初から「採用できなかった場合」を入れておきます。

考えられる対応は、採用だけではありません。

1. 勤務の組み方を見直す

不足する曜日や時間帯が限定されているなら、勤務希望を改めて確認し、短時間勤務や曜日限定の募集を検討します。ただし、既存職員へ一方的に負担を移さないことが前提です。

2. 業務を分け直す

資格が必要な業務と、周辺業務を分けます。清掃、物品補充、配膳、入力補助などを分担し直すことで、介護職員が直接的なケアや専門業務へ時間を使える場合があります。

3. 代替できる人を増やす

一人しか分からない請求、家族対応、計画書、教育などは、手順を記録し、少なくとももう一人が一部を担える状態を作ります。これは人数を増やす施策ではありませんが、一人の欠勤で業務が止まる危険を減らします。

4. やめる・減らす業務を決める

昔から続けている集計、二重入力、過度な会議や書類など、簡略化できる業務がないか確認します。安全や法令上必要な業務まで削らないよう、目的と根拠を確認して判断します。

5. 事業計画を見直す

どうしても安全な人員を確保できない場合、受け入れ人数、営業日、提供体制、新規事業の時期などを見直す判断も必要です。厳しい判断ですが、残った職員の無理な勤務を前提に計画を維持し続けることも、長期的には事業継続のリスクになります。


小規模事業所は「一枚」で始めてよい

専任の人事担当者がいない事業所で、詳細な人員データベースを最初から作る必要はありません。

まずは、経営者、管理者、現場責任者が同じ表を見ながら、次の項目を確認できれば十分です。

  • 現在の職種別人数と勤務量
  • 半年以内に分かっている変化
  • 制度上必要な人数
  • 現場を回すために必要な人数
  • 不足する可能性のある曜日・時間帯・業務
  • 入職時に必須の条件と、入職後に育成できること
  • 採用できなかった場合の対応

精密な数字を作ることより、空欄になっている項目を見つけることに意味があります。「この職種の最新基準を誰も確認できていない」「この仕事は一人しかできない」と分かれば、それが次の確認事項になります。

💡 H3 Incoverの考え方

要員計画は、「足りないから誰か採る」という一行を、職種・時間帯・役割・育成・代替方法に分けて考える作業です。採用できない現実を計画不足のせいにするものではありません。変えられない人材需給を認めながら、予想できた欠員まで毎回突然の出来事にしないための準備です。


要員計画整理シートをダウンロード

この記事の内容を事業所内で整理できるように、Excel形式の簡易シートを用意しました。

シートは、次の四つに分かれています。

  • 使い方
  • 半年以内の変化予定
  • 職種別の要員計画
  • 業務の偏り・代替可能性

黄色のセルへ入力すると、不足見込みのある職種を確認できます。制度上の人員基準を自動判定するものではないため、必要人数は最新の基準や自治体の取扱いを確認して入力してください。

介護事業所の要員計画整理シート

ダウンロード後、Excelで開いて黄色のセルへ入力してください。Googleドライブへアップロードすれば、Googleスプレッドシートでも利用できます。

要員計画整理シートをダウンロード(.xlsx)

今日できる最初の一歩

まず、職員名簿を詳しく作り直す必要はありません。

紙や表計算ソフトに、次の三つだけ書いてみてください。

  1. 半年以内に勤務が変わると分かっている職員・職種
  2. 一人休むと回らなくなる曜日・時間帯・業務
  3. その業務を今後もう一人へ伝えるなら、最初に何を共有するか

採用人数を決める前に、「いつ、何が止まりそうか」を見つける。それが要員計画の最初の一歩です。


まとめ

介護事業所の要員計画は、理想的な人数を並べるものでも、すべての退職を予測するものでもありません。

現在の人数、制度上の必要人数、現場を回すための人数を分け、半年以内の変化、忙しい時間帯、代替できない業務、入職時の必須条件、育成できる範囲を整理します。

採用できなかった場合には、勤務の組み方、業務分担、複数担当化、不要業務、事業計画まで含めて考えます。これにより人手不足がなくなるわけではありませんが、欠員が出るたびに残った職員の負担だけで対応する状況を減らせる可能性があります。

次回は、求人を出しても応募が来ないときに、求職者が事業所を知り、調べ、応募を判断するまでの「採用導線」と情報発信を取り上げます。


参考情報


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